私は彼女がとても好きだった。
彼女も私がとても好きだった。

幼い頃から私たちは、共に笑い共に歌い共に祈った。
私たちだけの時間が誰よりもたくさんあった。



毎朝の同じ時間。
彼女は私の為に水を捧げに来る。



昔私が佇んでいた青硝子の瓶は、とうの昔に替えられた。
もっと大きくてもっと立派な物に。
昔と同じように祈りが込められている筈なのに、私には冷く感じる。


彼女が、替えられた入れ物の前に立つ。
指先でそっと触れると、青い水が渦を巻きながら沸き上がった。
それは空中へ弾けるように消えながら、上へ上へと舞い上がっていく。

儚げに光が散る。
部屋へ舞い散る。


込めた祈りと共に 遠く遠く
すり抜けながら 青く散る
銀の色は 淡く空へ


頭上には女王の冠。
彼女の長く伸びた栗色の髪はそのまま背中へ流されている。

彼女は目を伏せたまま、何も言わなかった。

私が触れても気付かない。

届かない ことば。


込められた祈りを新しく
輝きながら 底へ散る。


「…おはよう」
小さな声で彼女が呟いた。
彼女が見ている方に、私はいない。




寂しさの後に残る物が
私にはまだ予想出来なくて
色々回っていく。

こんなに 穴が開く
届かなくて 遠くなる

埋めようとして 切なく光る


さようなら
さようなら


その言葉だけを
笑いながら。




* * * * * * * * * *

うん。何というかホント、分かりづらい話だと思います。すいません。
「玉響〜」は繋がらない感じの話にしたいので、今後もこんな形です。
(2004.09.28)


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