少し離れた所から人が来る気配がした。
2つの足音はこちらの方に向かってくる。
慣れ親しんだ気配。
「レナ!」
掛けられた声はクルルの物だった。
クルルは、レナとファリスの姿を見ると、自分も抱きついて来た。
クルルの側に立っていたバッツも、足早に近寄ってきて満面の笑みを浮かべる。
「心配してたぜ、レナ!」
「ごめんなさい。ちょっと遅れちゃったわ」
こっそり涙を拭いながら、姉とクルルから離れると、レナは微笑んだ。
「会えてホント良かったよ」
「バッツと姉さんが前に見本見せてくれた方法、とっても参考になったわよ」
思わずバッツの笑顔が引きつった。それを見てレナが声を立てて笑う。
思いもかけない部分を、思いもかけない人物にえぐられて、バッツは内心ヘコむ。
ああ、コイツらやっぱり姉妹だよ、とヤケクソのように思った。
レナがどんな方法を使ってここへ辿りついたのかなど、怖くて聞けなかった。
「見たよ、これ」
バッツの心情をよそに、クルルはレナへ言葉を向けた。
差し出されたのは1枚の紙だった。
確かめるまでもない。大臣から姉へ渡させた物だ。
「こんな手段あるんだーってびっくりしちゃった。それにしても、バッツとファリスよく気付いたよね!」
感心したような様子のクルルに、ファリスは思わず苦笑いを浮かべる。
「あぁ、まあ、な」
「ねえ、ねえ、レナ。あれ何使ったの?」
「あれ?実はね…」
姉へ手紙を書いた時、表の方には諦めと謝罪の言葉を綴った。
そして、その裏に部屋にあった飾りろうそくで強くこすって、本当に伝えたいメッセージを書いた。
『バレたけれど、絶対に諦めない。
何としても抜け出す。
必ず行くので予定通り待っていて欲しい。
信じて待っていて欲しい』
怪しまれるので表面へ余計な事は書けない。
姉達が気付いてくれることを祈りながら、そう書いた。
レナの話を聞きながら、バッツは改めて今回の計画の無鉄砲さが身に染みた。
うまく行ったから良かったものの、うまく行かなかったら、と考えるだけで寿命が縮まる思いがする。
もはや言うだけ無駄なのもよく知っているので、何も言わなかったが。
「言わぬが花」なのだ、という事を彼は身をもってよく知っていた。
女性陣は「すごーい」「さすがレナだな」「姉さんが気付いてくれた方がすごいわ」などと誉めあっていて、なんとも呑気なもんだとバッツは思う。
ああ、神様、これでジ・エンドな気がしないのはなんでなんでしょう。
まだ終わりではない、と告げる第六感の鋭さをバッツは大いに喜んだ…訳は勿論ないのだった。
彼にとっての最大の悪夢はこれからだったのだ、らしい。
* * * * * * * * *
「ロウソクで紙をこすって色液(絵の具液とか?)たらすと蝋で書いた部分を水分が弾く(よってこすった部分が浮き上がって見える)」というのを昔テレビか本かで見た覚えが。そんで今回葡萄の果汁(100%)ジュースとロウソク、紙で実験→いい感じにうまく浮き上がりましたので、多分行けるんではないかと。
(2005.05.02)
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